日本で戦争が起こっているさなかでもにぎわっていた上野動物園。動物たちと遊ぶ子どもたちの笑顔の影に消えた、数々の命ー。
静かに息をひきとった1頭のゾウ。その最期に、私も娘たちも言葉を失いました。
書籍紹介
- タイトル:『そして、トンキーもしんだ』
- 著者:たなべ まもる(文)
- 絵:かじ あゆた
- 出版社:国土社
あらすじ
- 戦時中の上野動物園で実際にあった「動物たちの悲劇」を題材にしたお話。
- 戦後80年。「どうして飼育員の人たちは動物を守り抜けなかったのか」の背景
- 子ども向け絵本でありながら、大人にも重く深いテーマ
感想・考察
今まで人間の友だちとして飼われていたたくさんの動物たちを、自分たちの手で最期を迎えさせなければならなくなった無念さ。一方で、それを当然のこととして一切の感情を排除し、命令する非情さを可能にしてしまう戦争ー。
当時は、多くの人が家族や父、夫、そして自身の子どもたちを戦場に連れ出され、動物園にいる動物たちだけ助けてあげるということが許されなかった時代。
ーせめて苦しむことのないよう、毒をまぜたエサをあたえてひといきに死なせてやろうとする飼育員さんの想いもむなしく、すべて選り分けてしまう象のトンキー。
最後の最後まで、自分の芸当をして、人間に助けをもとめたトンキー。
ページをめくるたびに胸が締めつけられ、涙をこらえることができませんでした。
いま、できること
終戦直後は、動物園の動物たちのエサのイモを運ぶ馬車が、人間の母たちの集団に止められた現実。そのイモを我が子のためにと、止めたとのことです。
この平和な時代に生きる私達には、「戦争下における人間の狂気的な非情さ」を理解することは難しいかもしれません。
2025年で戦後80年になります。たった80年前、こういった出来事がありました。
私にできることは、『忘れないこと』。
そして、この痛みを次の世代へと語り継ぐことだと感じています。
自分がなんとかして救えるいのちは、救ってあげられるよう行動していきたい。
それが、象トンキーの物語から私が受け取った願いです。
